日々の藍のお世話の話

現在の藍小屋の様子。藍さんが4甕

昔ながらの発酵の力で建てた藍染は生きている

すくもを作る過程で発酵し、染料を仕込む(藍を建てる)時から役目を終えるまでの間も発酵している

藍染が生きているというより、藍染の甕の中に微生物が沢山いて、その微生物が発酵という活動をすることにより染まる。
甕の中の沢山の微生物の中で染色に大事な作用するのは嫌気性を好む微生物

微生物の種類や数は解明されていないと思います。。
誰か研究して解明してほしいT^T

その微生物の働きが活発になれば発酵が進み、藍の色は元気な色を出してくれるし、逆に働きが不活発になれば発酵が止まり色が出なくなってしまいます。

日々のお世話というのは、その微生物を生かすために栄養を与えたり、休ませたり、環境を整えたりすることを言います。

栄養は色が薄くなってきたなぁと思ったら「ふすま」を与え
環境を整える、例えば液面がいつもと違いおかしい、変な匂いがする、pHが下がった時などは「貝灰」や「灰汁」をその時の状態に合わせて与えます。

また嫌気性を好む為、攪拌作業もしない日もあれば、弱くしたり、強くしたり、その時の状況によって攪拌のやり方も変えます。

ただ、微生物の種類や好みが全てわかる訳ではないので観察して、phを測って、温度を管理して今の藍さんがして欲しい手当ての方法を経験から判断して当てはめて対処していきます。 
これが難しい!

最近その中のいくつかの手当ての方法が分かってきたなと。思います。
だから死なないで生きていてくれる。

今からいる藍さん達は時間が経つにつれて発酵がだんだんゆっくりになっていき、色もゆっくり落ちていっている。
その過程がゆっくりと進みます。


染めていると藍に含まれるインディカンという成分がなくなって時間と共に出る色は薄くなりやがて色が出なくなります。

その時しか会えない美しい色に毎回感動してしまいます。
多分これは「地獄建て」をしているからこそだと。


私は染め師なので出来れば常に何か染めていたいのです、常に状態の良い藍さんがいる事が理想です。

そこで昨年より究極の藍の建て方(地獄建て:藍を建てる時に石灰や貝灰を使わず、すくもと灰汁だけで発酵させるので難しい、、難易度が地獄のように高為、地獄建と呼ばれる)に挑戦しています。4甕建てました。
通常藍の寿命は3ヶ月から半年位と聞きます。
地獄建ての方法だともっと長く生きて、長い期間藍染が楽しめます。

現在アイヒラコには4甕スタンバイしていて、全ての甕に役目があり、綺麗な色を見せてくれます。

※左から四つ目の甕の色、1番右が一年1ヶ月の甕の色
テッシュで試し染したもの

一つ目の甕: 1年1ヶ月目 (※1番右)

もう薄いけど綺麗な水色。

透き通る色の時とにごって渋い色になる時がある。
どちらも好きな色。   
作りたい物によって使い分けます。


二つ目の甕: 8ヶ月(※右から2番目)

もう中間の色味くらいしか出ないけど、とても元気!
青藍から薄縹の色間を行ったり来たりします。



三つ目の甕:4ヶ月目(※左から2番目)

建てたての濃い色は出ません。
良い色味です。紺色位まで染まります。

正に藍の色。


四つ目の甕:建てたての甕(※1番左)

まだ3週間、濃い〜色に染まります。
褐色、留紺位まで染まります
濃い色に染めたいものはこの時期限定!

大体2ヶ月半位まで、とても贅沢な藍染です!


染める時、とても良く染まり藍も元気なので気分が 
良く、染めるのが楽しい時期♪

      

どこまで長く染められるか、今後も挑戦は続きます。

藍の毎日のデータノートに殴り書きしてます。

     

      

こいのぼり制作〜水洗い編〜

今日は藍で染めた後の工程を紹介してみようと思います。

染めまでの行程とは違い地味な作業ですが、この作業はとても大事。

染めたばかりの生地には余分な染料や、灰汁がこれでもかとくっついています。

これらを取り除かないと澄んだ美しい藍色にはなりませんし、激しい色落ちや色移りの原因となります。

また、元々藍は天然染料なので化学染料のように高い堅牢度があるわけではないので、藍の持つ堅牢度のポテンシャルを高める為にも必要だと考えています。

行程はこんな感じ

染めた後、一晩水につけ翌日水洗いをして天日干しします。

その後も同じように水洗いをして天日干しを4回繰り返しします。

そして最後にお湯に一晩漬けて灰汁抜きをして天日干しをします。



この作業を終えた生地はここでやっと製品として使える生地になるのです。

今回は鯉のぼりなのでこの回数。
物によっては回数を変えます。


天日干しは天気の良い時にしか出来ません


私の住む豊橋は太平洋側なので比較的温暖で気候も安定している為
豊橋に住んでいて良かったなぁと思いながら、今日も水洗い天日干し作業をこなしています。


鍋の中身。最後の灰汁抜き後に出た灰汁

ごぼうを水につけた時に出るあくみたい!









新しい藍が建ちました

藍の仕込みから13日目です。
嵩上げをして、ふすまを投入して、濃く染まるようになってきました。
これで藍建完了です。
明日から染め始めます。

これから藍が元気な2ヶ月間は、藍染め体験が出来ますので、ご興味のある方はお電話かメールか、instagramのDMへご連絡ください。
詳細を改めてお知らせいたします。

今回、初めて『地獄建て』と呼ばれる方法で染液を仕込みました。

『地獄建て』とは、すくもと灰汁だけで仕込み、藍の還元菌である微生物が住む環境を整えて、微生物の力で発酵させるというもの。
化学薬品や石灰を使わずに、藍を建てます。天然のものしか使わない、循環型の染料です。

東京、原宿でアパレルパタンナーとして勤務していた頃、服作りの裏側を見てきて疑問に思っていた事。

大量生産、大量消費という行為の影に溢れる在庫、流行りのものは大切にされずにすぐゴミとなる。生地を作るにも染料にも化学薬品を使い、環境に負荷を与えているという事実。

何かできる事はないか?そんなことを考えていたころ、日本に昔から伝わる藍染と出会いました。
藍染といっても化学薬品を使用している物も巷には溢れていますが、地獄建ては天然のものしか使わず、使命を終えた染料は土に還ります。

ずっと目指してきたことのひとつが、形になってきました。

『作る時に気持ちが良い』それは使い手にとっても居心地の良いものになるのではないかと思います。

作り手である私達は、なるべく環境へ配慮したものづくりをする責任があると思っています。

まだまだ目指すところ、道半ばですが、これからもっと追求していきたいと思っています。


藍建て3日目 発酵

今朝、藍瓶の蓋を開けると紫色の還元膜が出現していました。
これは発酵しだした証で、藍の還元菌の微生物達の動きが活発になってきたということ。

瓶の中が微生物の好む温度、ph、環境になっているということ。

この還元膜が出たらホッとします!

昨日藍建2日目には発色しない状態でpHが10.6まで下がり慌てて1番灰汁を足して少しpHを上げたのですが、今日はpH10.8まで下がりました。

大体いつもと同じでpHが10.8くらいで還元膜が現れます。

いつもはこのタイミングで中石ですが、中石はせずに灰汁を徐々に足していきます。  

今回の藍建は地獄建てという建て方で、すくもと灰汁のみで発酵させた後、貝灰とふすまを足すというやり方です。貝灰を入れるかどうかはその時の状態を見て決めようと思います。

地獄建ては天然の原料、すくも、灰汁、貝灰、ふすまのみ。

あとは微生物の状態を良く観察して、大切に育てながら、染めていく。

微生物の活動が止まり、色が出なくなったあとは土に還します。

環境にも人にも優しい循環型の染料です。

今は瓶の半分位の水量なので、染められる水量になるまで、灰汁を追加し上げていきます。これを嵩上げといいます。

嵩上げ作業はまた次回書いていこうと思います。

藍建て 仕込み準備

今年最後の藍の仕込みをはじめました。
今日は蒅を2時間ほど踏み練りしました。
1日寝かせて明日から本格的な仕込みがスタートします。

今回はいつもと少し違う建て方でやってみようと思っています。
微生物のことを調べていたら、色々な藍の建て方を知り、試したくなりました。

すくもと灰汁のみで発酵させ、藍の手当は石灰の代わりに貝灰を使用する。攪拌の仕方も変えてみようと思います。

いつもより藍が長生きしてくれたら成功です!

写真は蒅(すくも)といい、藍染の染料になります。
アイヒラコで使う蒅は徳島県の藍師の新居さんから分けてもらっています。貴重な阿波藍です。
藍師が作付けし、育て、刈取り、そして100日程かけて発酵させたもの。
土の匂いがします💙

藍染の心構え

今は灰汁発酵建てと呼ばれる建て方で藍建てをしているのですが、近く、地獄建てと呼ばれる究極の藍建てをしたいと思い、それに合わせて読みたいと思っていた本を読みました。
《正藍染 爽やかな日本の色》
日本の染色16
泰流社 

読む前は地獄建ての具体的な建て方が書いてあるものと思っていました。読んでみると、そうではなく、名だたる有名な染色家の方の藍に対する真剣な向き合い方、心構えが書かれていました。

地獄建てには藍に向き合う姿勢、それこそ大事なのかもしれません。

藍を建てることを『藍を育てる』
毎日かきまぜながら具合を見ていくことを『藍のごきげんうかがい』といって、心を込めて作業し子供のように大事に育てていく。そんな様子を表現した言葉。地方によって言い方は変わるのですが、藍に向き合う気持ちが伝わります。

『乱暴にすくもを投げ込んだ藍甕はどうしても染めの艶は出ない。しかし優しくいたわるように仕込んだすくもは本当にこちらの気持ちをよく汲んでくれます。その藍の喜びが、染めの艶に出てくるんだね』北島正藍研究所 北島保さん

遠い昔から藍染に関わっている人は同じように藍を大切に思い、真剣に取り組んできたのだと、しみじみ。

それでも現在においても藍建て、日々の管理は、こうすれば正解ということが言えません。
だから毎日様子を見ては、ごきげんうかがいをして、『今日は調子がいいね、沢山染められるね、』『今日は沢山染めたから、栄養に貝灰、灰汁をどうぞ、また元気になってね』とそんな気遣いが必要なのです。

技術も大事だけど、藍にはそうした心構えが必要なのだと勉強になりました。


藍には沢山の効能が!!

化学薬品を使った藍染風ではなく、昔ながらの本藍染(天然藍灰汁発酵建)の効能です。

藍はその昔、薬草として重宝されてきたそうです。

抗菌効果や、止血効果、防虫効果に優れ、武士の肌着として重宝されていました。

大事なものは藍染の風呂敷に包んでおけば虫に喰われない、藍染の足袋を履けば水虫にならない、消臭効果もあるので臭くならないなどなど嬉しい効果が!

藍染の肌着は保温効果があり冷え性にも良いとされて、あせもや、かぶれ、アトピーなどの肌トラブルにも良いとされていています。

最近では紫外線を防止してくれるという嬉しい効果まで!

また本藍染の生地は何度も染料を染め重ねるので丈夫な生地に仕上がります。

古来より藍染は日本人に愛され、それはきっと美しく爽やかな心が落ち着く色彩であったこと、そして様々な効能があった事、自然の力を感じられる染液であること。

何より私は染めている時、藍にとても癒されるのです。それは日々感じていることでやめられない理由の一つ。

こんなに魅力的な要素が詰まった素晴らしい藍染を、まとったり、飾ったり、長く愛してくれるものを作ること。
それが私のお仕事です。

藍建て

藍建て完了しました。
今回の藍建てから徳島の新居さんのすくもを使用しています。
すくものせいか、環境が良かったのか、藍が発酵するまでの期間がとても早くて驚いております!!
発酵まで3日、嵩上げまで5日、順調すぎます!
明後日くらいから、この新しい藍で染めていこうと思います。
今回も本物の藍染め、美しい色をお届けしますので、お楽しみに!